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スタートアップの成長とアンチネットワークエフェクトの課題

ネットワーク効果という言葉を聞いたことがありますか?
ある製品のユーザーが増えるほど、その製品の価値が高まるという考え方です。

ですが実際にはスタートアップの事業において、その逆の現象が発生します。
ユーザーが少ないがために、更にそのユーザーが減ってしまうという状況です。
これをアンチネットワークエフェクトと言います。

せっかく新しい商品サービスを生み出しても、使ってもらえなければ意味がありません。
そのためにはアンチネットワークエフェクトについて理解しておく必要があるのです。

そのために何が必要か詳しく述べられている書籍を見つけました。
今回はアンドリュー・チェン著『ネットワークエフェクト』について解説します。

目次

ネットワーク効果とは?

ネットワーク効果(ネットワーク外部性)は、ある製品やサービスの価値がその使用者の数によって影響を受ける現象を指します。
つまり、より多くの人がその製品やサービスを使うほど、各個人にとっての価値が増加するということです。

たとえば、電話サービスやソーシャルネットワークなどが典型的な例です。
これらのサービスにおいては、参加者が多いほど、より多くの人と繋がることができ、結果的にサービスの全体的な価値が高まります。

ネットワーク外部性は正の外部性と負の外部性の二つがあります。

  • 正のネットワーク外部性は、ネットワークの参加者が増えることで全体の価値が増加する場合です。例えば、インターネットや交通網がこれに該当します。
  • 負のネットワーク外部性は、参加者が増えることでネットワークの価値が減少する場合を指します。例としては、過密交通や情報過多が挙げられます。

この現象は、ビジネス戦略や市場の分析、政策立案において非常に重要な要素となります。
ネットワーク外部性が高い製品やサービスは、初期の市場参入者にとっては困難が伴いますが、一定のユーザー基盤が確立されると、爆発的な成長を遂げる可能性があります。

アンチネットワークエフェクトとは?

ネットワーク効果とは逆の現象が発生することがあります。
それがアンチネットワークエフェクトです。

立ち上がったばかりのネットワークは、既存のユーザーが少ないから新規のユーザーが定着しないという好循環とは逆の作用が発生するのです。
例えばチャットツールでは、コミュニケーションを取りたい相手がそのツールを使っていなければ、ユーザーはそのツールを使わなくなるでしょう。

商品のネットワーク作りにおいては、最初の段階が最も難しいと言えます。
本書ではこれをコールドスタート問題を呼び、その解決策を示しています。

多くの商品サービスの成功事例では、このスタートアップ段階の苦労が省かれています。
ですがどんなに大きな事業であっても、最初の一歩は非常に小さいものなのです。

そしてユーザーを効果的に獲得し、ネットワーク効果を発揮できる状態にするために何が必要なのか、具体的な事例や施策を踏まえて解説されています。

コールドスタート理論の5ステージ

本書で解説するフレームワークは、5つのステージから構成されています。
各章でステージごとの課題、目標、ベストプラクティスが説明されているということです。

  1. コールドスタート問題
  2. 転換点
  3. 脱出速度
  4. 天井
  5. 参入障壁

これらについて簡単に説明していきます。

コールドスタート問題

新しい製品が破綻することは珍しいことではないですよね。
ユーザーが定着せず事業が軌道に乗らないというのは非常に多くの例を見ます。

軌道に乗ろうと奮闘するスタートアップの初期段階においては、アンチネットワークエフェクトが破壊的な作用をもたらすのです。
この問題を解決するには、ユーザーとコンテンツの両方を同時に集める必要があります。

ですがそれが簡単なことではないのは誰でもイメージができます。
解決の糸口は何なのか。

それは最小単位で機能するネットワークを構築することです。
これをアトミックネットワークと呼びます。

例えば電話であれば、通話相手が一人いれば、つまり最低二人いればネットワークとして機能します。
YouTubeのようなクリエイターが動画コンテンツを作成するネットワークであれば、もっと大きな数字が求められるでしょう。

まずはアトミックネットワークを一つ構築することが最初に目指すべきポイントです。

転換点

アトミックネットワークは一つ立ち上げるだけでも大変だが、事業を軌道に乗せるにはそれだけでは不十分です。
市場を広げていくには多くのネットワークを立ち上げる必要があるのです。

一つのネットワークが立ち上がるごとに、近接する、類似するネットワークの立ち上げが楽になっていきます。
こうしてネットワークの広がりが拡大し、好循環が生まれるようになるタイミングがあります。

それが転換点です。
転換点を迎えた製品はドミノ倒しのように拡大していくので、ネットワーク効果を発揮し始めるタイミングと言えるでしょう。

脱出速度

転換点を迎え、ネットワーク効果を生み出したところで安心するのはまだ早いです。
高い成長率を維持し、収益性を改善し続ける必要があるからです。

そのためには、ユーザーを獲得し、ユーザー間の交流を促進し、持続可能な収益を得ていくことになります。
場合によってはビジネスモデルを見直したり、従業員を雇ってサポート体制を整えることもあるでしょう。

多くのユーザーを抱えても問題が発生しないように、投資と回収のバランスを考えて事業を常に成長させる努力が必要になります。

天井

ネットワーク効果を発揮すると、事業は成長し続けるように思われるかも知れないがそうではありません。
全ての商品サービスにおいて必ず停滞する時期が来るのです。

それは市場が飽和し、顧客獲得コストが高騰する場合や、バイラル成長が鈍化する場合などが考えられます。
つまりは事業の成長にも天井があると言うことです。

この問題を解決するには、次々と現れる問題に対処し続ける必要があります。
天井に達しているのに問題を放置しているとユーザーの離脱やエンゲージメントの低下が発生し、更に問題が大きくなっていくでしょう。

事業を拡大する力と、逆に崩壊させる力がせめぎ合うように働いているのです。

参入障壁

天井の問題に対処し続けられるようになれば、最後は競合他社の参入から事業を守ることが重要になります。

市場によってネットワークの規模も様々です。
競争においてはネットワークの規模に合わせた適切な戦略を選択する必要があるのです。

多くの場合、ネットワークの質と規模で競合を撃退できます。
それは競合との比較において、価格や機能ではなくネットワーク効果が重要な意味を持っていることを示唆しています。

まとめ

ネットワーク効果について全く知らなかった自分が恥ずかしくなるくらい、ビジネスに置いて重要な観点だと気づけました。
そして何より安易にネットワーク効果を過信してはいけない、それぞれのステージでたゆまぬ努力と工夫が必要なのだと痛感する内容となっていました。

これからビジネスを始めたいと思っている方や、マーケティングについて学びたい方は是非参考にしてください。
ネットワーク効果を発揮するノウハウと実際の事業での具体的な施策が詰まっています。

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