マーケティングを学んでいると、様々な考え方を取り入れることができます。
ですがその中には根拠のないものや、理想を述べただけの法則も多く見られます。
今回紹介する書籍では、こういった問題点を指摘しつつ、本来焦点を当てるべきまだ顧客になっていない層である未顧客をいかに理解し、適切なマーケティングを実施かについて解説されています。
特によく見かける考え方として、既存の顧客を大切にしていれば売り上げは伸びるというものです。
ですがそれは大きな間違いです。
売上を伸ばすには既存顧客だけを大切にしていてはいけません。
なぜなら市場の全体像はある程度決まっていて、浸透率を上げなければ売り上げは頭打ちになるからです。
今回は芹澤連著『未顧客理解』について解説します。
著者紹介
https://note.com/serizawaren/n/nddf490132ec8
マーケティングサイエンティスト。数学/統計学などの理系アプローチと、心理学/文化人類学などの文系アプローチに幅広く精通。非購買層やノンユーザー理解の第一人者として、消費財を中心に、化粧品、自動車、金融、メディア、エンターテインメント、インフラ、D2Cなどの戦略領域に従事。エビデンスベースのコンサルティングで事業会社の市場拡大を支援する傍ら、執筆や講演活動も行っており、企業研修などの講師を務める。著書に『顧客体験マーケティング』(インプレス)、『“未”顧客理解:なぜ「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』『戦略ごっこ―マーケティング以前の問題 エビデンス思考で見極める「事業成長の分岐点」』(日経BP)。日本マーケティング学会員。海外論文を読むのが日課。猫好き。
マーケティングの学者さんであるようです。
文系理系の両面からアプローチして、未顧客理解の第一人者として活動されている方です。
著書も複数あり根拠あるマーケティングについて学ぶには最適な方だと思います。
ペルソナを作ることが有効なのか?
私自身、マーケティングを学んでいてよく出てくるペルソナという考え方に疑問を持っていました。
顧客の属性やプロファイルを考えたところで、新規の集客に効果的な施策が見つかるとは思えないからです。
この書籍でも未顧客を理解していく上では、ペルソナの構築では不十分だと述べられています。
それは人に焦点を当てた考え方であり、実際には買う人と買わない人がいる訳ではないからです。
では何がポイントなのかと言うと、買う状況と買わない状況があるのです。
例えば外出先でどうしてものどが渇いていたら少し高くても自動販売機で飲み物を買いますよね。
でもスーパーで安く買えるものをあえて店外にある自動販売機で買うことはないはずです。
こういった買う状況のことを「文脈」と言います。
この書籍では文脈を正しく理解することが未顧客を理解することだと考えています。
購買行動の法則性・規則性に気づくこと
既存のデータを利用して得られるのは既に購入してくれている顧客のデータだけです。
そのデータをどれだけ分析しても、未顧客の理解にはつながりません。
と言うことは、新規の集客に対する施策はデータの分析からは得られないと言うことです。
ではどうすれば良いのか。
それは未顧客の購入するシーンを作ってあげることです。
これをCEP(カテゴリーエントリーポイント)と言います。
つまりは自身の商品サービスへの入り口を設計することが重要なのです。
それは未顧客の行動の法則性を見つけ出し、それに合わせた施策を講じることでもあります。
具体的な例について紹介していきます。
ゼロオーダーの選択肢に入るには?
例えば自動販売機で飲み物を買うシーンで考えてみましょう。
私の場合、仕事でもう少し頑張りたい時に買う選択肢に入るのは以下の3つです。
- エナジードリンク
- ブラックコーヒー
- 甘いドリンク
これらのどれを選ぶかはその時の状況によって変わります。
暑くて炭酸でスッキリしたい時はエナジードリンクを。
眠くてカフェインでシャキッとしたい時はブラックコーヒーを。
お腹が空いて何かで空腹感を軽減したい時は甘いドリンクを。
このように自動販売機で飲み物を買う時でも、その背景にある状況によって選択肢が変わってきます。
これは前回何を選んだかに関係なく、その場その場で何を買うかがその都度変わるというゼロオーダーの法則によるものです。
この考え方からすると、まず選択肢に自身の商品サービスが入っていることが重要だと理解できるはずです。
私の例で言えば、通常はミネラルウォーターを買うことは選択肢に入っていません。
ですが仕事で頑張りたい時にミネラルウォーターが効果的であると言う情報を得ることで、選択肢に入る可能性がありますよね。
そういった未顧客の選択肢に入る効果的な訴求を複数持つことで、様々な状況で未顧客があなたの商品サービスを購入する確率を上げていくことが売上向上に有効なのです。
感想
私はマーケティングを学んで専門性を高めていますが、その中にはこの書籍で紹介されているように、間違った考え方も多くありました。
きちんと根拠のある法則性を学び、集客の施策を検討する必要があると痛感する内容でした。
また、その施策構築のためのフレームワークも詳しく解説されていて、実際に売上を伸ばすために考えるべきことがしっかりと書かれています。
マーケティングを学んでいる人や、これから起業したいと考えている方には非常におススメの1冊です。
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